シャガールのステンドグラスの小さな教会
マルク・シャガールのデザインしたステンドグラスは、フランスやドイツなど結構あちこちにあるようですが、皆大聖堂や大きな教会ばかりです。しかしイギリスには、小さな村の教会で、突然シャガールのステンドグラスに出会える場所があります。義母のアドバイスで、晴れた午後を選んで出掛けました。場所は、ケント州のTonbridge トンブリッジ近くのTudley タドリーという村。教会の名前は、「All Saints Church オール・セインツ教会」です。因みにトンブリッジの近くには、Tunbridge Wells トンブリッジ・ウェルズとかTandridge タンドリッジという地名があり、紛らわしいので御注意を。
何故そんな小さな村の教会に、いきなり巨匠のステンドグラスが存在するかと言いますと、村の近郊に住む裕福な一族の娘が、1963年に、二人の仲間と共に海難事故で21歳で水死し、その若過ぎる死を悼んだ家族や友達が、彼女のモニュメントを残そうとシャガールに依頼しました。それを芸術家が承諾した、と言う経緯があるのです。
御覧の通り、一応13世紀に起源を持つとは言え、イギリスの一般的な村の教会と比べても、外観は全く地味(失礼)。村自体何の変哲もない、牧草地と果樹園の中に狭い道路と民家が数件だけあるような小ささで、情報を知らなければ、絶対素通りしてしまうはずです。
しかし中に入ると、シャガールのステンドグラス独特の青白い光に包まれ、思わず感嘆の声を上げたくなる(注:勿論教会なので静粛に)美しさでした。
教会の内部も至って簡素なので、一層ステンドグラスの美しさが引き立ちます。コンパクトな教会なだけに、内部中がシャガールのステンドグラスの光であふれている感じです。
現在この教会の窓全てが、シャガールの作品になっています。(ちなみに元々はめ込まれていた普通の宗教画らしい19世紀のステンドグラスは、鐘楼部分に保存されています)。三回に渡って制作されたそうで、最初に作られたのが、この主祭壇のもの。両親の希望で、娘の死の様子(左下)や、嘆き悲しむ母(右下端)が描かれています。
ここのステンドグラスは、大抵青が主体ですが、二枚だけ黄色がメインの窓があります。
私の特に好きな一枚です。幅は1mに満たないもので、天使の構図が窓のフォルムに上手く組み込まれて、下部の鳩や馬も、シャガールらしく牧歌的で愛らしいのです。この教会に居ると、青という色の美しさを改めて認識し、また切ない色だと痛感します。
これらが奥深く繊細な優しさに溢れているのは、独特の色彩や図案だけではなく、近付いて見ると、ガラスのパーツそれぞれに黒い文様が入っているからです。
この文様は、シャガール自らこの教会に出向いて、一枚一枚ペイントしているのです。
私は、他のシャガールのステンドグラスは、チューリッヒのフラウミュンスター教会のものしか見たことがありませんが(あと最近のチチェスター大聖堂)、はっきり言って、そこでこんなに感動した憶えはありません。大きな教会建築の窓は、余りに巨大だし、有名な観光地で人も多いので、じっくり静かに隅々まで鑑賞できないからでしょう。彼の作品を身近に感じ、また恐れ多くも彼自身を身近に感じるのには、この小さな教会は最高の場所かと思います。何より娘の死の悲しみに共感した、シャガールの制作に対する真摯な心が、ひしひしと伝わって来ます。「シャガールの光」に包まれる体験をしたい方は、是非訪ねて見て下さい。
何故そんな小さな村の教会に、いきなり巨匠のステンドグラスが存在するかと言いますと、村の近郊に住む裕福な一族の娘が、1963年に、二人の仲間と共に海難事故で21歳で水死し、その若過ぎる死を悼んだ家族や友達が、彼女のモニュメントを残そうとシャガールに依頼しました。それを芸術家が承諾した、と言う経緯があるのです。
by derliebling
| 2008-05-31 04:25
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こんにちは!「ぴよよん」です。当ブログに御訪問頂き有り難うございます♪ 英国に住んでいますが中欧好きです。蚤の市等で出会った、または手作りなどの可愛い雑貨たちを紹介していきたいと思います。
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