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いにしえの日本のミニ・ポット

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チャリティショップやフリーマーケットで良く見掛ける古物として、どうしても日本人として気になるものがあります。それが、こんな見るからに古めかしい日本の磁器です。多分戦前から占領下時代のもので、日本では骨董品屋でもない限り中々お目に掛かれない程の古さですが、こちらでは本当にしょっちゅう見掛けます(ちなみに現代物の日本のテーブルウェアも結構見掛けます)。アイテムとしては、C&S(カップ&ソーサー)が圧倒的に多く、続いて絵皿や小さな花瓶がチラホラと。バックスタンプには、JAPANや「日本」と書いてある場合もありますが、FOREIGNとのみ記してある場合も多く、始めから輸出目的で製造されていたようです。一般の日本人にとって、未だC&Sで紅茶を飲むなんて習慣が全く知られていなかった時代、外貨を稼ぐために、せっせと異国の習慣に合わせた食器を輸出していたようです。素材は、大抵陽に透ける程薄く軽いポーセリンで、この薄さは当時のイギリスでも驚異的だったのではと思われます。しかし絵柄は言うと、極めて日本的なモチーフばかりで(たまにエセ中国やインチキ西洋風もある)、フォルムと激しくミスマッチ。そもそも、大抵お世辞にも巧みで美しいとは言えない、日本人らしからぬ稚拙さなのだけれど、皆どう見ても手描きで彩色されています。そんなに古く見えるのに、意外とカケやヒビのあるものが少ないのは、元々素材が丈夫なのか、それとも余りに薄い為、欠けると粉々になったのかも知れない…と踏んでいます。とにかく、これ程多く出回っていたところを見ると、当時そんなに東洋趣味がイギリスの一般人に受け入れられていたのか、それとも単に安価だから需要があったのか、そして日本の一体主に何処で生産されていたのか、大変気になるところです。しかし、現在のイギリス人のライフスタイルには全く似合わず、今こうして手放す人が多いのも頷けます。
いにしえの日本のミニ・ポット_f0141785_5261198.jpg
このポットは、例の山小屋風チャリティショップで出会ったもの。数多いいにしえの日本の輸出用磁器の中でも、こんなポットを見掛けるのは初めてでした。極めてスタンダードな形のティーポットに見えますが、最大幅は持ち手と注ぎ口を含めても12cm以下で、一般の急須よりも遥かに小さく、実は手のひらに乗る程なのです。多分極細の赤の主線のみ転写プリントで、後はかなり大雑把に手彩色されています。絵柄は、日の丸柄の扇を持った日本髪に着物姿の女性(一応芸者としておこう)と、赤提灯、桜と、日本人としては小っ恥ずかしくなって来る程の日本らしさてんこ盛り。ゴチャ付いた画面を、一応トップ部分の藍と金彩が、中々小気味良く締めています。
いにしえの日本のミニ・ポット_f0141785_5263049.jpg
家に帰ってからP太に見せたら、「これはままごと用の食器か?」と聞かれました。そう言われても可笑しくない小ささなのですが、蓋を開けて中を覗いて見ると、ちゃんと茶漉し用の穴が空いているので、どうやら実際紅茶を注ぐ為のものだったようです。ティーバッグの存在しない時代の、一人分用のポットだったのかも知れません。でも私は、ラー油やお酢入れなど、調味料ディスペンサーとして使用するつもりです。

後からフリマで、こういう日本の古い陶器のバッグプリントを一つ一つチェックして見たら、幾つかにKUTANIや「九谷」の文字が見られました。家に帰ってネットで調べたところ、これらの多くは、確かに九谷焼かその流派で間違いないようです。そして究極の薄手磁器は、「卵殻手」や「エッグシェル」と呼ばれていたそうです。その名の通り卵の殻のように薄く、当然割れ易く輸送中の損失も大きいので、そのうち製造中止され、今では作り手もほとんど絶えたとか。戦後のアメリカの占領下時代に大量に輸出していた為、慣れていない絵付師…と言うか多分素人も借り出されていたから、稚拙で雑な絵付けが多いようです(なので絵柄の上手い美しいもののほうが、年代の古い可能性が高い)。イギリスで何気に沢山見て来た古い日本の食器が、終戦直後の貧しいドン底の時代を物語る、歴史の遺物だったのは興味深いことです。
by derliebling | 2011-07-13 17:41 | テーブル&キッチンウェア


こんにちは!「ぴよよん」です。当ブログに御訪問頂き有り難うございます♪ 英国に住んでいますが中欧好きです。蚤の市等で出会った、または手作りなどの可愛い雑貨たちを紹介していきたいと思います。


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