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まだまだビミョウなイギリスの食文化

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外国だから、当然様々な文化の違いがあります。特にイギリスの食文化は、長年鎖国状態のような独自の発展(…と言うか独自の停滞)を遂げて来た為、随分マシになったと言われる現在でも、まだまだヨーロッパの他の国と比べても、微妙に奇異な点が沢山あります。とにかくイギリスの食について語ると、イギリスの医療と同様に、全くネタが尽きません。例えこれらを異文化として寛大に受け止められたとしても、美味しいと思えるかどうかは…、また別な問題です(笑)。
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まずはオムレツ。普通日本人が思い浮かべるのは、ふっくらラグビーボール型で中身がトロトロ状態のフランス式のオムレツです。極単純な材料ながら、絶妙な火加減で綺麗な黄色に仕上げられたオムレツは、まるで幸せの象徴のようです。炎の魔法と呼ばれ、上手く焼くのには結構熟練の技が要ります。しかしイギリスのオムレツは、言わば単なる甘くない卵液を硬く焼いただけのもので、テク一切不要。一応マッシュルームやチーズ、ハム等のトッピングを加えることが多いので、スペインのトルティーヤ、イタリアのフリッタータの平べったい版と呼ぶほうが近いかも知れません。しかしトルティーヤやフリッタータのように野菜の食感や旨みや満足感もなく、正直味も見た目も幸せの象徴からは程遠いものです。

それからフレンチトースト。週末の朝食当番のP太が、ある朝フレンチトーストを焼いてくれると言うので楽しみに出来上がりを待っていたのですが、食べて非常に悲しい味がしました。…これはP太のせいではなく、元々イギリスのフレンチトーストが、パンを塩味の卵液に浸して焼いただけと言うモノだからです。言わばパンのピカタでしょうか。後日、日本で知られていてるフンワリ甘いフレンチトーストを作ってあげたら、「これはブレッドプディングだ」と言い張りました。因みに本国フランスでも、フレンチトースト(日本のもののほうが近い)は、今は一般人にはほとんど知られていない絶滅危惧種のようです。
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ハムエッグは、イギリスでは朝食時だけではなく、終日注文できる代表的なパブ・メニューの一つです(大抵どっさりチップスが付く)。料理と呼べる程のものではありませんが、フリーレンジの新鮮な卵や自家製ハニーローストのハムを使ったハムエッグは、それなりに美味しいものです。イギリス人は、目玉焼きの焼き加減には相当拘りがあるように思います。でもこの国では、ハムは絶対焼かないんですよね…。私はこんがり焼けたハムが結構好きなのですが。上の写真は、B&Bの典型的な英国式朝食のベーコンエッグで、ベーコンやソーセージを目玉焼きに添える時は、やっぱり焼きます。ハムの場合は、すでに加熱してあるから、更にわざわざ調理する必要はないってことなのか?? とは言え、冷たい厚切りハムの上に熱々の目玉焼きが乗っているのは、勿体ないような残念なような、とにかく腑に落ちない感じです。家で作る時には、自分の分だけはハムを焼きます。

ゆで卵をハンバーグのような挽肉ダネで包んでパン粉を塗して揚げたスコッチエッグは、「スコットランドの」と呼ばれるからには、元々イギリス料理です。子供の頃、育ての母が良く作ってくれた、私にとっては懐かしい味ですが、大人になって自分で作ってみたら、スッゴク面倒で驚きました。当然そんな面倒なものをイギリス人が一般家庭で料理する訳がなく、スコッチエッグは、こちらではもっぱら出来合いのものを買うのみの食べ物となっています。そして、家庭で作らなくなってから随分久しい年月が経っているせいか、温かいスコッチエッグを食べる習慣は今やすっかり消えました。揚げ物を、しかも大抵安い挽肉を使っているので脂身が白く固まっているものを、冷たいままでしか食べないのです…。同様に、ポークパイと呼ばれるひき肉の脂身が白く固まった料理も、家庭で作る習慣が随分昔に途絶えた為、冷たいままでしか食べません。絶対温めたほうが美味しそう(と言うか辛うじてマシ)に思えるのだけど、これらが温かいと、イギリス人は食べられないそうです。まあ、日本でレンジでチンするコンビニ弁当に慣れ過ぎた若者が、漬物は温めて食べるものと思い込んでいる現象に似ているかも知れません。
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P太の両親が我が家に来て一緒に出掛ける際、その前に簡単な昼食を取ろうと、スープとパン、ハムやチーズなどを食卓に並べました。パンはクロワッサンで、自分で勝手にハムやチーズを挟むセルフサービス式。ところがP太も義母も、スープを前菜として先に食べてしまい、中々パンに手を付けません。しばらくしてから義母が、「…そうね、フランスではクロワッサンを食事として食べるものね」と言って、やっとパンにハムを挟み始めました。クロワッサンのサンドウィッチは、フランスは勿論、日本でも世界中の国でも見掛けます。でもイギリスでは、あくまでクロワッサンは「お茶菓子」で、食事としては食べないのだそうです。今ではP太は、クロワッサンのサンドウィッチがすっかり気に入っています。
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全てが日本に比べ大雑把でいい加減に思えるイギリスですが、同じ甘い食べ物でも、tea cake(お茶菓子)とデザートにはハッキリクッキリ区別があります。例えば、レアチーズケーキはあくまでデザートで、三時のお茶と一緒には決して食べません。甘いプディングやパイと呼ばれるものは概ねデザートで、レストランやパブではデザートの総称をプディングと呼ぶこともあります。ただしアップルパイのように、お茶菓子としてもデザートとしても食べるものも多少はあります。デザートの場合、アイスクリームかカスタードソースを添えるのが一般的なようです。
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そんなイギリスの食べ物の中でも、今尚最もショーゲキなのが、結婚式や誕生日等のデコレーション・ケーキ、すなわちセレブレーション・ケーキでしょう。糖衣を臆することなく使い捲くり、実際イギリス人以外にとっては食用不可能。美味しそうに見せる工夫は全く無視で、見るからに頭悪そうなケーキです(笑)。
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これまでイギリス料理の特徴と言えば、まず真っ先に挙げられるのが、「不味い!」と言う非常に不名誉な現実でした。そもそも何故伝統的に不味かったのかと言えば、「イギリス人は、食に興味のあることをはしたないと見なす」とか、色々憶測が言われて来ましたが、実際には非常に食に保守的で、慣れ親しんだ味しか(怖くて)受け付けないと言うのが、大方の真相のように感じます。しかしこの件に関しては、ここ10年位で国民の食への関心が急速に深まり、移民の増加に寄り他国の食文化が浸透し、外食産業が飛躍的に発展した為、旅行者でも安心して利用できる店、満足できる味が一気に増え、つまりかなりマトモになったとはっきりと言えます。しかしそれは、きちんとした食事に限ったことで、軽く簡単に安く済ませようと思うと、まだまだ選択に非常に苦労します。また、パーティ料理やBBQ(バーベキュー)等も、楽しいイベントに何もこんなオソマツなものを食べなくとも…と言うレベルです。
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かつてはイギリス料理について、「外食は不味くて高いけれど、家庭料理は美味しい」と言われ続けて来ました。しかしこれに関しては、甚だ疑問です。外食がひどかったのは紛れも無い事実ですが、家庭料理を味う機会など観光客には無かったので、こちらの真偽の程は分かりません。そして現在のイギリスの家庭料理が美味しいかと言うと、これもまた分かりません! こちらに住み始めて以来、何度か一般家庭のパーティや食事などに招待されました。しかし生粋のイギリス人家庭で、未だ一度も真っ当に料理と呼べるものを出されたことがないからです。パンと数種のハムやチーズが並んでいるとか、オーブンで暖めるだけのインスタント食品(チルドや冷凍)が並んでいるだけ…。P太に言わせると、現在のイギリス人の食事は、そう言った出来合いの食品に頼るばかりで、一から料理する習慣がほとんど無いそうです。ハンガリー人の友人も、イギリスのスーパーマーケットで出来合い食品の多さに驚いていました。週に一度のゴミ回収の日に近所を見渡しても、我が家に比べ3倍以上のゴミの多さに驚きます。やはり出来合い食品のパッケージが嵩張るせいかも…と踏んでいます。一方、年配者には料理をする人も未だ多いようですが、聞く話に寄ると、レパートリーは極端に少ないそうです。コテージ・パイやフィッシャーマンズ・パイなど伝統的なイギリス料理を見てみると、同じ材料や調理法でも、もう少し工夫すれば、もっとずっと美味しくなるのに…と思えるものが多いように感じます。P太から聞く限り、結局イギリスの家庭料理は昔から期待できるシロモノではなく、かろうじて外食よりはマシだった程度のようです。
by derliebling | 2011-06-25 07:11 | イギリス生活・文化


こんにちは!「ぴよよん」です。当ブログに御訪問頂き有り難うございます♪ 英国に住んでいますが中欧好きです。蚤の市等で出会った、または手作りなどの可愛い雑貨たちを紹介していきたいと思います。


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