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ドラジェ・カラーのお姫様映画「マリー・アントワネット」

ドラジェ・カラーのお姫様映画「マリー・アントワネット」_f0141785_4345621.jpgソフィア・コッポラ監督が女優のキルスティン・ダンストでこの映画を撮っていると知った時から、ちょっと興味がありました。しかし店頭でDVDのジャケットを見て(右下の写真)、余りにも軽薄そうで(アントワネットとはそういう人なんですが)、見る気が失せました。同じ映画でもイギリスと日本では、ポスターやDVDのジャケットのデザインが大抵異なります。私は日本人のせいか、日本仕様のほうが魅力的、つまり映画を見る気にさせてくれることが多いと思います。試しにネットでこの映画のレビューを読んで見ると、「キルスティン・ダンストは王妃どころか貴族にすら見えず、歴史を無視した駄作」と評価する人がいる反面、「これは”歴史映画”ではなく、あくまで”青春映画”。マリー・アントワネットから見た世界なので、革命のことが全く出てこないのは当然。独特の感性で描かれた面白い映画」と楽しんだ人もいるようです。そういうことを踏まえて見るなら良いかも、と思いました。
確かに歴史的に見ると、突っ込み処は満載です。この映画の中でアントワネットは、ハプスブルクの大公女としては普段着のような格好で、ピクニックに行くような軽装備の馬車でフランスに嫁ぎます。でもこれは、フランス宮廷の華やかで享楽的な世界との差をはっきりさせる演出だろうし、アントワネット本人にしてみれば、気持ち的にはその程度だったのかも知れません。とにかく全編が美味しそうなお菓子と(イギリスでは遥か彼方の存在)、美しいお姫様ドレスてんこ盛りの映画。明るく屈託のないアントワネットの悩みと言えば、夫ルイの身体的な欠陥のため実質的な夫婦生活がなく、故に子宝に恵まれない寂しさや焦りと、戦場の愛人フェルセンの身を案じること位。王妃を自覚した態度は、本当に革命まで一切登場しません。ともすれば単調で薄っぺらい「アイ・キャンディ(見て楽しいだけの映画)」になり勝ちだけど、所々女性監督ならではの小気味良い演出と、繊細な色彩が飽きさせません。ロックが流れる斬新な雰囲気のせいか、フランスが舞台なのに、登場人物の話すのが英語でも(ルイ15世なんてテキサス訛りだ)余り気になりません。それにやはり、キルスティン・ダンストの魅力が支えていると思います。アントワネットのバカぶりにウンザリしないのは、彼女の愛らしさの成せる業です。美人というよりは可愛く、確かに王妃としての威厳は感じられないけど、決してハスッパではなく、この映画全体にガーリッシュな柔らかさを漂わせています。メイクや衣装のお陰もあり、越し入れする初々しい14歳から、ベルサイユを去る、女性として成熟した30歳台中盤まで、ちゃんと”らしく”演じています。このように全く重くない、歴史の苦手な人でも十分楽しめる「女の子映画」ですが、やはり少しは、前もってこの時代の歴史背景をかじっておいたほうが一層面白いと思います。せめてベルばら位は。じゃないと、ロココな人々が本当にロックでダンスしたと思ってしまいますから(笑)。
マリー・アントワネットという人は、決して悪人ではなかったのに、時代や地位に人柄が全く合っていなかったため、悲劇を生んだようです。とにかく深く考えるのが苦手な、典型的なビンボー(可愛いけど頭はカラッポ)タイプのお姫様だったように思います。ドラジェ・カラーのお姫様映画「マリー・アントワネット」_f0141785_435199.jpg彼女の母は、ハプスブルク家きっての才媛と呼ばれ、君主としての能力抜群だったマリア・テレジア。父親の皇帝フランツ・シュテファンは、自分が軍事・政治に向いていないのを良く自覚していたから、妻に全く干渉せず、芸術の審美眼や経済には才能を発揮しました。アントワネットは、不幸にもこの両親の美点を全く受け継いでいないんです。もっともお父さんは末娘の彼女の小さい時に亡くなり、お母さんとも14歳で引き離されたし、マリア・テレジアは政治家としては優秀でも、子育てでは非常にムラがあり、余り成功しなかったようです。
ちなみにこのDVDを見たのは、奇しくもちょうど7月14日でした。
by derliebling | 2009-07-26 01:39 | 本・メディア


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